古き良きガーデニング!今こそ見直そう、盆栽の楽しみ

ホームエコノミー時代、自宅に植物を取り入れて癒されよう

人々が緑をより求め出した

在宅時間が増え、かつては外で行われていた経済活動も、今や自宅で完結しつつあります。そんな中ふと部屋を見渡してみると、その殺風景さに心寂しさ覚えるなんてことも、よくある話です。

そこでおすすめしたいのが生活に緑を取り入れることです。昔から「緑は大事だ」なんて言われていますが、実際それは科学的な裏付けも取れています。

「緑視率」という言葉をご存知でしょうか。もともと街作りの分野で用いられていた語で、視界に占める緑色の比率を指し、10〜15%が集中力を最も高め、25%を超えると大きな安らぎを得られるとされています。最近数を増やしているコワーキングスペースにはやたらと植物が散見されますが、それもそのはず、緑は安らぎを与えてくれるだけでなく生産性まで向上させてくれる、人々の重要なパートナーなのですから。

自宅に植物を

このような植物は、自宅でも大きな力を発揮してくれるでしょう。生活に植物を取り入れると無機質にも思える部屋が途端に心地よく感じられるようになり、わたしたちの日々の生活を豊かなものに変えてくれます。朝の手入れが日課になったり、作業中に心の余裕をもらったり、生活の中で共に季節を感じたり、空気清浄の役割まで担ってくれたりと、具体的なメリットは枚挙にいとまがありません。

「身近に緑が足りない」「部屋に植物を飾ってみたい」と一度でもそう思ったのなら、おめでとうございます、それが緑と暮らす豊かな人生の始まりです。

日本の伝統的な文化「盆栽」の価値を見直そう

植物を育てるということ

自宅での生活に植物を取り入れる、これには二つのアプローチがあるでしょう。一つは生花店や花の定期便などで購入した切り花を飾ること、そして二つ目は自分で植物を育てること、です。

切り花を生活に取り入れることは手軽で、毎週の気分に合わせて好きな草花を飾れるという魅力があります。切り花は枯れさえしますが、適切に手入れをすれば割に長持ちするものです。

しかし自分で植物を育ててみることは、買ってきた切り花を飾ることとは全く異なる意味合いを持ちます。切り花は基本的にピークの状態で売られていることが多いため、飾った直後が最も美しく、時間を経るにつれてその新鮮な鮮やかさを失ってゆきます。一方植物を育ててみるとどうでしょうか、それは単なる消費と異なり、生産の営みを意味します。毎日の手入れは状態の維持ではなく成長という形で現れるため、植物と共に生きているという感覚を得ることができます。ゆっくりと、しかし日々着実に育つ草木を見ていると、あまり人生急ぎすぎるものではないと、優しく嗜められているような心地もするものです。

盆栽は場所を取らない

ひとえに植物を育てるといっても、観賞用の草花木果から食用のものまで対象はさまざまです。しかし規模が大きくなると部屋やベランダのスペースを圧迫しかねません。そこでおすすめしたいのが、小さな姿に魅力が詰まった盆栽です。細かなものだと手のひらにのるくらいのサイズ感ですが、それでも立派な樹木、その様からまるで大自然がぎゅっと縮小したようだと例えられることもしばしばです。

そもそも盆栽とは

例えにあったように、盆栽とは小ぶりな盆に木を植えて、美しく雄大な自然風景を表現したもののことをいいます。小さな盆の中で個人のイメージする風景を再現させるため、針金を用いて成形したり剪定したりと技巧を凝らします。古くは古代中国で誕生し、日本では平安時代より主に武士などから親しまれてきました。

盆栽は育てる樹種から4種程度に分類できます。

  1. 葉物盆栽(雑木盆栽)

特徴:紅葉や落葉など、四季折々の変化が楽しめる。成長が早く、初心者にもおすすめ。

品種:楓、紅葉、欅など

  1. 松柏盆栽

特徴:いかにも盆栽といった常緑の樹種。丈夫で折れたり枯れたりのトラブルが少ない。

品種:松、檜、柏など

  1. 花物盆栽

特徴:季節によって花を咲かせる樹種。彩と共に香りも楽しめるものもある。

品種:桜、梅、皐月など

  1. 実物盆栽

特徴:食べられる実をつける樹種。精緻な剪定がなくとも様になる。

品種:姫林檎、花梨、枸杞など

いずれも土や肥料、それを入れる盆が必要となります。植えたら後は定期的に水と肥料を与えて、適宜日を当てたり剪定をしたりと、時間と愛情をかけて育ててゆくことになります。高さが10cm程度で手のひらに乗る規模感のいわゆる「ミニ盆栽」でも、手入れすれば数年から数十年と生きるため、まさに生活を共にするパートナーとなります。初めての方は諸々の揃う専門店に足を運び、ビビッと来たものを選んでみると良いでしょう。樹種によって手入れの方法も異なるため、プロの指南を受けることも上手に育てるコツの一つです。

盆栽はあらゆる人におすすめ

ここまで盆栽を紹介してきて、小難しくてとっつきにくいと感じた方も少なくないかもしれません。しかし強調しておきたいのが、盆栽はシニアだけのものではなく、老若男女、誰でも親しみを持って育てることのできるものだという点です。

盆栽は私と共にある

仕事や学業、家庭のことなど、複数のタスクに追われていると、そこにあるはずの自然に意識が向かず、ニュースで桜の開花を知ったり、色づき終えた頃に紅葉に気が付いたりと、四季の移ろいに鈍くなったことを悲しく感じている方も少なくないのではないでしょうか。

それと小学生のころ、アサガオの観察日記をつけたことを覚えていますか。宿題だからなんとなくこなしていたけれど、大人になった今ならもっと楽しめるのに、なんてこともよく耳にします。

植物と関わるということは、植物とコミュニケーションをとることであり、それを通して季節を知ることでもあり、そして一つの命を預かるということです。

そこには鑑賞するという楽しみだけでなく、成長の喜びも、日々のお手入れでの愛着も、だからこその癒しも、そして枯れゆくことの悲しみまでも、多くの感情が生まれます。

盆栽はそのような植物の中でもひときわ繊細で、手入れが手軽ではない反面、共に長い時を過ごすことができます。自分だけの盆に毎年訪ねる春があり、日々色付く秋がある。育てた木と過ごす人生のなんと豊かなことでしょうか。

盆栽は生活に木々が浸透している日本に暮らす人々にとって、とても身近でそれでいて美しく感じられるものです。飽くことなく愛情を注げて、さまざまな表情を見せてくれる盆栽は、日々の手間さえ惜しまなければ人生を共にする伴侶にもなり得ます。

盆栽は誰でも育てられる

盆栽として育てられる木々はたくさんの種類があるので、あまり植物に触れたことがない場合も、その後少しずつ慣れてきた後も、それぞれに合った樹種を選ぶことができます。また小さいものを選べば場所も取らない植物なので、一度に複数育てることも難しいことではないでしょう。

盆栽を育てることには経験の有無も、育てる者の年齢も関係ありません。ただ一つ問われるものは愛情のみです。惜しまず愛情を注げば、きっとその小さな自然はあなたに応えてくれることでしょう。

今こそ、盆栽と暮らしてみよう

 盆栽は緑として機能してくれるだけでなく、繊細で愛情に敏感な植物として私たちの生活を豊かなものに変えてくれます。

自宅で過ごす時間が長くなった今こそ、四季の訪れや日々の成長の楽しみを与えてくれる盆栽は、代え難い存在としてあなたを支えてくれることでしょう。

心に余裕が持てない若い世代も、多くを抱えるミドル世代も、自分の時間を持てるシニア世代も、老若男女問わず、一度盆栽のある人生を検討してみてはいかがでしょうか。


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